外地探偵小説集 第三弾
藤田知浩 編
定価2400円+税
四六判 358頁
2010年6月発売
ISBN 978-4-915961-70-0
戦前の南方(東南アジア付近)は、そのほとんどが欧米の植民地であり、人種や文化の坩堝(るつぼ)であった……。忘れられた〈外地〉を舞台とするミステリ・アンソロジー、その第三弾がここに登場。フィリピン、シンガポール、スマトラ等を舞台にした七編の探偵小説に加え、巻頭にガイドとして、編者・執筆、グレゴリ青山・イラストによる「探偵小説的南方案内」を置く。日本の探偵小説が描き出す南方の姿とは!?
藤田知浩 (ふじた・ともひろ) [編者]
日本文学研究家。
グレゴリ青山 (ぐれごり・あおやま) [イラスト]
漫画家およびイラストレーター。著書に『グ印亜細亜商會』(旅行人)、『旅で会いましょう』(メディアファクトリー)、『ブンブン堂のグレちゃん』(イースト・プレス)等がある。
山口 海旋風 「破壊神(シヴァ)の第三の眼」
北村小松 「湖ホテル」
耶止説夫 「南方探偵局」
玉川一郎 「スーツ・ケース」
日影丈吉 「食人鬼」
田中 万三記 「C・ルメラの死体」
陳 舜臣 「スマトラに沈む」
山口 海旋風 「破壊神(シヴァ)の第三の眼」
オランダ領東インド(現インドネシア)の小島、ロバム島を買い取り、島の王として暮らす日本人の主人公。その周囲に現れる不可思議な事件。冒険の末に、たどりついた真実とは……。
北村小松 「湖ホテル」
大戦前のフィリピン、とある日本人移民に殺人容疑がかけられ、死刑判決が下された。犯人が別にいると信じる日本人の主人公は、探偵役をかってでて、真相究明に乗り出す……。
耶止説夫 「南方探偵局」
日本軍の進駐により、昭南島と改名されたシンガポール。探偵を志望する日本人の娘は、そこにいる兄をたずね、「南方探偵局」をひらく。その客としてやってきたのは、一人のマレー人であった……。
玉川一郎 「スーツ・ケース」
前線の状況を伝えるため、報道班員として南方に赴いた作家と画家のコンビ。徴用されたオンボロ漁船に乗って、バリ島よりも東にある、スンバワ島へと足を伸ばすが……。
日影丈吉「食人鬼」
飢えに苦しめられたニューギニア戦線から、かろうじて脱出した主人公と、その部下。二人は後方にあたるジャワ島で、英気を養っていた。しかし、とある噂が流れだし、二人を追い詰めてゆく……。
田中 万三記「C・ルメラの死体」
アメリカの統治下にある戦前のフィリピンでは、スペイン人と現地人のハーフや、日本人などの移民が暮らしていた。主人公である日本人少年は、ある日、父の店で働いているハーフの死体をみつける。それは、惨劇の幕開けであった……。
陳 舜臣「スマトラに沈む」
実在の中国人作家、郁達夫は、日本軍の追求を逃れるため、スマトラに潜伏していた。だが、終戦から少したった頃、突然姿を消した。かつて現地で郁の姿を見たことのある主人公は、終戦から20年後、郁を知る人々を訪ねてゆく。そして最後に、数奇な運命で郁と関わった人物に、たどりつく……。
毎日新聞(2010年7月11日)・書評欄・川本三郎 評
せらび書房の単行本